最適化疲れに名前がついたとき、私は「完璧主義の信者」を辞めた
エンジニアリングの世界は論理的で美しい。だからこそ、今この瞬間に「完成」し、今後のどんな変化にも確実に対処可能な、圧倒的な完全体を作ろうと躍起になっていた。その頃の私は、毎朝最初に考えることが「今日のプロンプト」だった。ChatGPTが出た頃の話だ。
AI時代に人間として持続可能に働くための実験記録。認知負荷・最適化疲れと向き合うプロダクトエンジニアのサバイバルログ。
kinocoboy が書いています
プロダクトエンジニア。適応課題に向き合うエンジニア。適応型ソフトウェア開発、認知的降伏、認知負荷マネジメント、チーミングを専門領域とし、人間とテクノロジーの境界で起きる摩擦をほどくことを仕事にしている。
エンジニアリングの世界は論理的で美しい。だからこそ、今この瞬間に「完成」し、今後のどんな変化にも確実に対処可能な、圧倒的な完全体を作ろうと躍起になっていた。その頃の私は、毎朝最初に考えることが「今日のプロンプト」だった。ChatGPTが出た頃の話だ。
リモートワークになってから、朝起きて最初に考えることが「今日何を着よう」だった。誰にも会わないのに、なぜか毎朝クローゼットの前で立ち止まる。大した選択じゃないのに、この小さな決断が一日の頭のリソースを奪っていく実感があった。「明日着る服を決めておけばいい」というアドバイスは聞き飽きた。
6月2日ごろ、Chrome 149がリリースされた。その中でも目を引いたのは、DevTools(F12で開く開発者ツール)のAIアシスタントの大幅アップデートだ。Lighthouseと連携してパフォーマンスを分析し、Core Web Vitalsをウィジェット表示し、CSSのコード補完までしてくれるらしい。
2026年1月5日、私はルールを決めた。Claude Codeを使い、自分ではコードを一切書かない。AIを使役してコードを書かせ、自分は指示と責任を担う。5ヶ月続けてわかったこと、レビュー負荷の変化、そしてエンジニアとして研鑽を続ける意味について。
AIで何でもできる。そう本気で思っていた時期があった。Cursorがコードを自動生成し、Claudeがバグを修正し、ChatGPTが設計の相談に乗ってくれる。プロンプトさえ磨けば、あらゆる問題が解決する。そう信じて、プロンプトエンジニアリングの記事を読み漁り、少しでもいい回答を引き出そうと必死になっていた。
この半年、コーディングという行為のかなりの部分がagentic codingに置き換わっていった。CursorやClaude Codeがコードを書き、指摘すれば修正し、テストまで生成してくれる。それでも、プロダクトのデリバリー速度が劇的に上がったかというと、そんなことはなかった。