すべてをやめた日

Notionのデータベースを閉じたのは、先月のことだ。

タスク管理、読書メモ、プロジェクト管理、習慣トラッカー。2年かけてNotionに人生のすべてを集約し、飽き足らずObsidianに移行し、プラグインを30以上入れてデイリーノートのテンプレートを自作した。

気づいたら、仕事をするためにツールを整備しているのか、ツールを整備するために仕事をしているのか、わからなくなっていた。

すべて閉じて、無印良品でA5ノートを買った。

3つのツールを使い比べた結論

NotionObsidian紙のノート
学習コスト高い(2〜3週間)中程度(1週間)ゼロ
思考の自由度★★☆☆☆★★★★☆★★★★★
見返す頻度★★☆☆☆★★★☆☆★★★★★
続けやすさ★★☆☆☆★★★☆☆★★★★★
紙に書いたことの8割は覚えている。Notionに入れたタスクの8割は二度と見返さなかった。これはスペック表には出てこない差だ。

紙とペンで変わったこと

Notionを閉じてから、いくつかのことが変わった。

書き方が変わった。デジタルツールは「書く前から構造化」させる。データベースのフィールドを定義し、テンプレートを選び、プロパティを設定する。紙は違う。思いついたことをそのまま書き、あとから線でつなぐ。この順番の違いが、出てくるアイデアの質を変える。

通知がなくなった。同期もない。書いたことはそこにだけある。この「閉じている」感覚は、常に同期し続けるクラウドツールでは得られなかった。誰にも見られないし、共有もできない。それがいい。

時間が空いた。ツールの設定やテンプレート探しに費やしていた週3〜5時間が、まるごと消えた。その時間で、ただ座って考えている。

後から知ったこと

紙とペンに戻って数週間して、同僚から「こんなレポートがある」とGlobal Wellness Summitの2026年トレンドレポートを教えてもらった。

読んでみると、第2位に「The Over-Optimization Backlash(最適化の反動)」という項目があった。ピークウェルネス、バイオハッキング、生産性の徹底的な数値化。そういった「すべてを最適化し尽くす」ムーブメントに対する反発が、世界的なトレンドとして名前を持ったらしい。

自分のやったことに偶然名前がついていただけだが、悪い気はしなかった。

これは「デジタル否定」という話ではない。コードはVSCodeで書くし、チームのドキュメントはNotionに置いている。ただ、個人の思考やメモに関しては、デジタルである必要がなかった。

私の周りにも、Notionを「使っているつもりで使っていない」エンジニアは多い。立派なデータベースを構築したあと、結局書き込むのはSlackか付箋だったりする。

今日のタスクを、スマホのメモではなく手元の紙に書いてみてほしい。それだけで、ツールに支配されていた感覚が少し変わる。