この記事でわかること
- Notion→Obsidian→紙ノートの比較と思考の自由度の違い
- デジタルツールの「書く前から構造化」が与える制限
- 紙に戻って気づいた「閉じている」感覚の価値
すべてをやめた日
Notionのデータベースを閉じたのは、先月のことだ。
タスク管理、読書メモ、プロジェクト管理、習慣トラッカー。2年かけてNotionに人生のすべてを集約し、飽き足らずObsidianに移行し、プラグインを30以上入れてデイリーノートのテンプレートを自作した。気づいたら、仕事をするためにツールを整備しているのか、ツールを整備するために仕事をしているのか、わからなくなっていた。
すべて閉じて、無印良品でA5ノートを買った。
3つのツールを使い比べた結論
| Notion | Obsidian | 紙のノート | |
|---|---|---|---|
| 学習コスト | 高い(2〜3週間) | 中程度(1週間) | ゼロ |
| 思考の自由度 | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 見返す頻度 | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 続けやすさ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
紙とペンで変わったこと
書き方が変わった。デジタルツールは「書く前から構造化」させる。データベースのフィールドを定義し、テンプレートを選び、プロパティを設定する。紙は違う。思いついたことをそのまま書き、あとから線でつなぐ。この順番の違いが出てくるアイデアの質を変える。
通知がなくなった。同期もない。書いたことはそこにだけある。この「閉じている」感覚は、常に同期し続けるクラウドツールでは得られなかった。
時間が空いた。ツールの設定やテンプレート探しに費やしていた週3〜5時間がまるごと消えた。その時間で、ただ座って考えている。
後から知ったこと
紙とペンに戻って数週間して、同僚から「こんなレポートがある」とGlobal Wellness Summitの2026年トレンドレポートを教えてもらった。第2位に「The Over-Optimization Backlash」という項目があったらしい。
ピークウェルネス、バイオハッキング、生産性の徹底的な数値化。そういった「すべてを最適化し尽くす」ムーブメントに対する反発が、世界的なトレンドとして名前を持った。自分のやったことに偶然名前がついていただけで、悪い気はしなかった。
これは「デジタル否定」の話じゃない。コードはVSCodeで書くし、チームのドキュメントはNotionに置いている。ただ、個人の思考やメモに関してはデジタルである必要がなかった。AIが情報を処理する時代だからこそ、人間の思考はもっと自由でいい。その自由さを紙がくれるんだと思う。
同じく「道具を整える」ことと「やりすぎない」ことのバランスが問われるのがリモートワークの音響環境だ。音響設備に金をかけるのがAI時代の礼儀だとすれば、紙のノートに戻るのもAI時代の選択肢の一つだろう。
紙に慣れてきたら、殴り書き用と清書用で2冊に分けるワークフローがさらに効いた。一度にすべてを整理しようとしなくていい。
この「やりすぎた後にやめた」話の全体像は、最適化疲れ(Over-Optimization Backlash)とは何かにまとめている。
今日のタスクを、スマホのメモではなく手元の紙に書いてみてほしい。それだけで、ツールに支配されていた感覚が少し変わる。
万年筆でなくても、ボールペンでいい。書くという行為が、思考を自分のものにする第一歩だ。