3本のプロポーザルを書いた

ここ1ヶ月で、3つの技術カンファレンスにプロポーザルを提出した。フロントエンドカンファレンス、プロダクトエンジニアカンファレンス、PHPカンファレンスだ。

一番時間がかかったのはフロントエンドカンファレンス向けのプロポーザルだった。テーマを決めるのに3日、実際に書くのに2日かかった。いちばん短かったのはPHPカンファレンス向けで、半日で書き終えた。どれも提案する内容は違うけれど、根っこにあるものは同じだった。日々の開発で実際に起きたことをベースに、そこから何を学んでどう行動を変えたか、という話だ。

なぜいま、3本も書くのか

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プロポーザルを書き始めたのは、半年前にたまたまカンファレンスの登壇募集を見かけたのがきっかけだ。そのときは「自分なんかが話せることなんてない」と思って応募しなかった。でもあとから、自分のやってきたことを文章にしようとすると、意外と手が止まることに気づいた。やっていることを言語化できない。それが気持ち悪かった。

それからは、カンファレンスの募集を見つけるたびにプロポーザルを書いてみることにした。採択されるかどうかは二の次だ。書くことそのものが、いまの自分の立ち位置を測るリトマス試験紙になる。

プロポーザルを書くという行為は、自分の日々の行動を棚卸しすることだ。なにを課題だと思い、どう手を動かし、そこから何を学んだか。それに人が関心を持つかどうかで、自分の行動の質が測れる。

プロポーザルに書いたこと

フロントエンドカンファレンスには、ここ数年のフロントエンド開発の変化と、そこで自分が選んだ技術的選択について書いた。プロダクトエンジニアカンファレンスには、プロダクト開発で大切にしている考え方と、実際にチームで起きた問題の話。PHPカンファレンスには、バックエンドのコードを長く運用し続けることの難しさと、そのなかで見つけた工夫について。

どれも「最先端の技術」や「画期的な解決策」の話じゃない。地味な現場の話だ。でもそれがいまの自分が持っているすべてだった。

書いているうちに気づいた。コードを書けることや技術スタックの知識よりも、自分が何を見て何を考えどう行動してきたか。そっちのほうがプロポーザルの中身になる。テクニカルスキルじゃなくて、「この人は何を見てきたのか」が問われる。AIがコードを書く時代に、人間の価値はそっち側に移っている。

人としての価値を確かめる

AIに任せきりで自分で考えなくなってしまう「認知的降伏」とは正反対の行為がプロポーザル執筆だ。自分の考えを整理し、人に伝わる形にする。このプロセス自体が自己検証になる。

プロポーザルを書く前は、「自分には話せることなんてない」と思っていた。でも実際に書いてみると、逆だった。毎日いろんな判断をしているのに、それを言葉にしていなかっただけだった。AIにコードを書かせるようになって、自分で考える機会が減っている自覚があったから、プロポーザルはちょうどいいリハビリテーションになった。

結果を待つ

採否が出るのはもう少し先だ。たぶん落ちるものもあるし、通るものもあるかもしれない。でもどちらでもいい。

プロポーザルが通らなかったからといって、やってきたことの価値がゼロになるわけではない。たまたまその年は別のテーマが求められていただけのことも多い。数字ひとつで判断しすぎないこと。

採否の結果よりも、書き終えたあとに「来年はこれで勝負したい」と思えるテーマが見えたことのほうが大きい。それは自分ひとりで考えていても出てこなかった。人に伝えるつもりで書くからこそ、頭の中のモヤモヤが輪郭をもつ

プロポーザルはカンファレンスに応募するためだけのものじゃなかった。定期的に自分を外に晒し、市場の目線で自分の価値を確かめる。AI時代に自分の頭で考え続けるための、最低限の習慣として組込もうと思っている。

今日から試すこと

次にカンファレンスの募集を見かけたら、採択を気にせずプロポーザルを書いてみてほしい。

まずは800文字程度でいい。「この1年で自分が一番苦労したこと」を書き出すだけで、意外と「自分の強み」が見えてくる。